プロジェクトマネージャー 松井 俊輔
10月に入り、朝晩は肌寒さを感じ、サンマなど秋の味覚の話題を耳にすることが増え、秋の訪れを感じるようになってきました。
秋は気候もよく「スポーツの秋」「読書の秋」と言われますが、美味しいものに目がない私としてはやはり「食欲の秋」が思い浮かびます。
新潟には本当に美味しいものがたくさんあるなあ、と感じているのですが、多くの食材の旬や実りを迎える秋。中でも新潟で味わう新米の美味しさは格別で、おかずは何にしようか…。と想像するだけで、嬉しさと楽しみでいっぱいになります。
と、私の「食欲の秋」への思いは、これぐらいといたしまして…
「~の秋」で代表的なものが「芸術の秋」ではないでしょうか。そして、まさに11月30日までの期間、新潟県では「国民文化祭にいがた、全国障害者芸術文化祭にいがた」が開催されています。国民文化祭は、観光、まちづくり、国際交流等各分野の特色を生かした文化の祭典であり、今年度で第34回目。県内全域で様々なイベントが企画されています。
私は「文化祭」という言葉から、音楽やダンス、演劇、アートといった演目が企画されていると思っていましたが、実際プログラム一覧を見てみると、様々なジャンルに渡るイベントが企画されていることに驚きました。
個人的に気になるイベントをいくつかピックアップしますと、
「生活文化」分野:江戸時代の豪農の婚礼料理を再現
「歴史文化」分野:木喰仏めぐり、病とたたかう ―近代医学と新潟県人―
「食文化」分野:発酵食品のトークイベント、全県の小中学校で行われる「和食給食」
などがあり、音楽や演劇といった演目だけではないということが、おわかりいただけるかと思います。(やはり“食”関係が多いではないか、というご指摘がありそうですが)
「文化・芸術」の活動は古今東西を問わず、それ自身での経済的自立が難しい例が多く、時の権力者の庇護や、国などからの公的支援、企業からの資金援助によって成り立っている活動が多く見受けられます。そのため、政治状況や経済状況など、支援している側の状況が変わると、それら文化・芸術活動への支援にも影響があることは、過去を振り返っても多くありました。
しかしながら、そういった厳しい状況の中でも守り続けられてきたものもあり、それらを後世に伝えていこう、更に広げていこうとする人々の気持ちが、今回のプログラムを通して伝わってきます。
プログラム一覧を見て感じることは「“文化・芸術”とは地域の誇りなのではないか」ということです。地域の人々が大切に守りたいと感じてきたもの、自然と体にしみついているもの、地域を作ってきたもの、後世へも続いてほしいと思っているもの。中には一度絶えたけれども、復活をとげた祭や演目もあります。それを復活させたのは、やはり地域の人々の「地域の誇り」としての思いなのではないでしょうか。
また、歴史の長さや規模の大きさだけではなく、日々新たな文化・芸術も生まれ、人々の生活に深く関わっています。例えば「新潟と言えばマンガ王国」というように、新たな文化・芸術が根付き、海外からのファンが新潟を訪れる観光交流の一つとなっています。新しいものを否定するのではなく、受入れ、広めていくことが、文化交流であり多様性のある地域につながることにもなるのです。
「おらが地域の誇り」として、その地域で根付いているものが多い地域ということが、精神的に豊かな地域、様々なものを受け容れている地域ということが、多様性を認め誰もが住みよい地域ということなのかもしれません。そのような地域は、日本全体が少子高齢化で人口が減り続ける中で、文化交流を深めることで交流人口を増やし、人口流出を防ぐことができると思います。
私は先日開催された、デーモン小暮さんが坂口安吾の書いた「桜の森の満開の下」を朗読する会を鑑賞してきました。坂口安吾作品を読んだことがなかったので、「初・安吾の世界」だったのですが、「初・デーモン閣下の世界」でもあり、イベント名のとおり「妖気爛漫」そのものでした。国民文化祭では、様々な世界を感じることができそうです。
11月30日まで地域色豊かなイベントが多く企画されていますので、皆さんも芸術の秋を堪能し、いつもと違う世界を体感しに出かけられてはいかがでしょうか。