統括プロジェクトマネージャー 百合岡 雅博
いつもお世話になっています。IPCビジネス支援センターの百合岡です。
私自身の業務は、地域経済の活性化に少しでも貢献することだと思っていますが、力を尽くせていないことを感じている日々です。そのようななか、「プレイス・ブランディング」というテーマの講義を聞く機会がありました。
簡単にいうと、「地域・場所など、空間自体をブランディングする」ことです。これだけ聞くと、新しいものではありませんが、「地域・場所で経験したできごとをそのまま感じ取り、意味づける」、つまり「個人や特定の人間集団にとって特別な意味を帯びた空間」を対象にブランディングすることに、重要なポイントがあると感じました。
そして、もうひとつ注目するポイントが、事例として紹介された瀬戸内のブランディングです。
瀬戸内国際芸術祭に代表されるような「アート」の取り組みと、しまなみ海道の「サイクリング」の聖地化、そして瀬戸内7県が連携した観光マーケティング組織「せとうちDMO」が設立、瀬戸内という地域を「意味づける」取り組みがはじまり、認識されるようになってきました。
詳しくは、このサイトをご覧ください。https://dentsu-ho.com/booklets/317
★ 今回のキーワードは、『 夢を見続ける 』です ★
瀬戸内の取り組みをもう少し詳しく見てみます。
アートの取り組みは、1992年に地元企業のベネッセがホテルと美術館を融合した建物を建築し、その後、アート体験ができるようになるなどして、少しずつ注目を高めていくなか有名な芸術家がかかわるようになり、2010年から瀬戸内国際芸術祭が開催され、今では多方面から評価を得られるようになってきました。この間におおよそ20年を要しています。
一方、サイクリングは、しまなみ海道が1980年から部分的に開通、1999年には全線開通となり、レンタサイクル事業も開始されましたが利用者が伸び悩む状態が続いていました。注目されるきっかけになったのは、2012年に台湾の自転車メーカー「ジャイアント」の会長が実際に走破したことで、このとき、サイクリングロードとしての価値が確認されたことがきっかけとなりますが、これも10年以上を要しています。
瀬戸内のように時間がかかっても成果が出れば評価されますが、いずれ成果が出ると思いながら10年以上も地道に取り組んでいるこの期間中は、周辺から、さまざまな指摘がされたのではないかと想像されます。それでも、ひとりでも多くの人に知ってもらい、具体的な行動を起こしてもらうまでには相当の時間をかけ、少しでも満足してもらえるよう地道にひとつひとつ積み上げていった結果が、発信力のある人が興味を持つことになった背景にあると考えます。
最近は、他社の成功事例などを探し、遅れないよう自身も取り組むという情報収集活動がビジネスでは一般的になっています。このこと自体に問題があるのではなく、他社で行っていることは自身が動く「きっかけ」や、動き方の「参考」となりますので積極的な情報収集が重要です。問題になるのは、個別に事情や背景などが異なるにもかかわらず、結果が出ないからといってすぐにあきらめてしまうことです。
瀬戸内が成功したのは、予算のあるなしに関係なく、夢を見て、その夢を見続け、それを実現するまで10年以上あきらめず、少しずつでも改善していったことにあると思います。皆さんも瀬戸内の取り組みを参考に、新しいことをはじめるのはもちろん、長く続けたいことにチャレンジいただければと思います。IPCも皆さまのチャレンジを応援させていただきます。