統括プロジェクトマネージャー 百合岡 雅博
いつもお世話になっています。IPCビジネス支援センターの百合岡です。
いきなりですが、日本人の平均寿命が長くなっているのは、多くの人がご存知だと思います。しかし、先進国を代表するアメリカとイギリスの平均寿命が短くなっていることをご存知の方は少ないように思います。具体的には図のとおりで、2012年から2016年の5年間で日本人の平均寿命は約0.88歳増えていますが、アメリカは横ばいからわずかですが減少、イギリスでは2014年を境に急速に減少している状態がわかります。
これらの国でおおきな変化があったようには思えませんし、食生活についても年々健康志向が高まっていると感じていますが、実際にはこのような状況となっています。
この他、2012年から2016年の間にかけ、アメリカのGDPは115.3%伸長した一方で、イギリスは99.9%で横ばい、日本は79.8%にまで低下しています。
2010年頃のアメリカはリーマンショックの影響から景気が低迷していましたが、その後、順調に経済が回復してきました。イギリスもブリグジットを迎え不安感はありながらも方向性を定め、調整をすすめているように思います。今後、日本経済におおきな影響を与えるこれら国々の経済がどう変化するか注視しなければならないと思っていますが、実際のところ、これらの数字から私が漠然と感じている不安は別のところにあります。目先の業績は大事ですが、それだけに振り回されていると、今は数字(GDP)が良くても、好調な業績を継続するために何らかの無理が生じていて、それが最も重要な資源である「人」に思ってもいなかった悪影響(寿命の減少)を及ぼしているのではないかということです。
★ 今回のキーワードは、『 長期視点 』です ★
この間、日本はGDPが大幅に減少するなど、今のところマスコミでいわれるほど景気が良くなったという肌感を持つのは難しいですが、この5年の間に世のなかが悪くなったという印象を持たずにいられた時期だったと考えています。もちろん、この状態を目指していたかどうかうかがい知ることはできません。
最近になって、経営にはこれまで以上のスピードが大事で、流行の商品や人など「今」に焦点をあてた話題が目立つようになったと感じます。もちろん、「今」の延長線上に「将来」があるので「今」を大事にするのは当然ですが、あらためて腰をしっかり据え、長期視点で物事をとらえ、今、そしてこれからどのように行動すべきなのか検討する機会が重要はないかと感じています。長期視点といっても5年程度のスパンの検討で良いと考えています。
長期視点での検討が少なくなっている理由は、変化のスピードが速い時代に、どうなるかわからない将来のことを議論しても仕方ないという意識があるように考えます。このため、長期視点で検討しても誰もが共感できる理想的で、抽象的な姿をあらわす言葉だけが先行して、具体的な行動にまで落とし込みをしないままに議論を終わらせてきたことも課題だと感じています。
わからない時代だからこそ、将来を実現するため、どの時期に、どのような行動を起こすのかをできるだけ具体的に落とし込むことで、本当に実現できる姿なのか判断することも重要だと思います。さまざまな変化があるから検討できないのではなく、長期視点に立ち方向性を定めたうえで、変化に柔軟に対応することが、継続して発展する企業に求められることではないでしょうか。