プロジェクトマネージャー 春川英広
新潟で活躍する経営者やリーダーの取り組みを事例に、中小企業が勝つための“リアルなヒント”を探るこのコラム。2回目となる今回は、東区の老舗材木店・松吉ワークスさんのプロジェクトをご紹介します。
■同社の・・・
専務取締役・小松原亮氏は、自社(材木店)の顧客でもある「大工」の存在を、もっと多くの消費者に知ってもらい「価値ある家づくりを後世に伝えたい」という“熱い想い”から、プロジェクトチーム「JIFT(ジフト)」を立ち上げ、活動中です。
メンバーは小松原氏と、新潟市内の若手大工。「棟梁(とうりょう)経験がある」「建築士や施工管理技士など国家資格を持っている」といった独自基準を満たす「家づくりの精鋭」のみで構成されています。
チーム名「JIFT」の由来は、Join(つなぐ)、Idea(アイデア)、Find a way(工夫する)、Technique(技術・技法)という、メンバーが大切にしたいキーワードの頭文字からとったのだそうです。
■主な活動は・・・
木工体験イベント「大工が教えるワークショップ」の企画と運営。
開催するたび“満員”となる人気イベントで、最近では幼稚園や自治体などから出張ワークショップの依頼を受けるなど“ひっぱりだこ”です。
昨今、消費者の目線は、大手ハウスメーカーやローコストビルダーなどに奪われがちですが、JIFTはこのイベントで「大工と消費者の接点」を創出し、家づくりについて、気軽に相談してもらえる環境を整えようと奮闘中です。
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■JIFTのすごいところは・・・
イベントの盛況ぶりだけではありません。
この活動の本質は、消費者が大工に対し、不安やストレスを感じることなく気軽に家づくりの相談ができるよう、「顧客視点」に立脚した“仕組みづくり”に挑戦している点にあります。なかでも、小松原氏が「大工ナビゲーター」となり、第三者的な立場から「大工選び」をサポートするサービスは画期的です。
■具体的には・・・
家づくりを考える消費者は「大工ナビゲーター」を通じて、JIFTに所属する複数の大工に提案を依頼することが可能です。また、前述のとおり提案内容を比較検討する際は、大工ナビゲーターが第三者的な立場でアドバイスも行います。
さらに、「提案を受けたものの、今ひとつ・・・」という場合には、大工ナビゲーターが「お断り代行」までするという徹底ぶりです。
■ちなみに・・・
提案を依頼する前段階においても、消費者はJIFTのWEBページから大工のプロフィールを閲覧することができますが、その内容もまた特徴的です。
「家づくりが成功するかどうかはパートナー選びにかかっている」というJIFT独自の考えのもと、大工個人の「理念」や「人となり」など“人物像”に焦点を当てた記事を掲載し、「大手」とは違った切り口で、大工の魅力を発信しています。
☆JIFTの活動の詳細はWEBページからご覧いただけます。
ホームページ
http://www.jift.life/
フェイスブックページ
https://www.facebook.com/jift.life/
■最後に・・・
ビジネスを成長させようと思った時、経営者の眼前に立ちはだかるのは「先行投資」と言う、高く分厚い“壁”です。
限られた経営資源を投じるべきか否か・・・
いかに情報収集をしようとも、論理的思考を駆使しようとも、不確実な未来を完全に「予測」することなど不可能です。
結局のところ、経営者に「決断」を促せるのは、「損してでも、やるべきだ」という“熱い想い”のみなのかもしれません。
JIFTの取り組みは、即座に松吉ワークスの利益に貢献するわけではありませんが、未来を創りだすために不可欠な、いわば「先行投資」のような活動ではないでしょうか。
小松原氏の“熱い想い”から始まった若き経営者たちの挑戦がどんなリターンをもたらすのか、今後も目が離せません!
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JIFT代表 小松原亮氏
(松吉ワークス株式会社 専務取締役)