2016.08.31
食の技術コーディネーター 椎葉 彰典
日が暮れるのも、だんだん早くなってきました。
薄暗くなって、人の顔も見分けにくくなって、「誰ですかあなたは」という意味で「誰そ彼(たそかれ)」と、昔の人はすれ違う際に声を掛けていたといいます。
そういえば、万葉集の秋相聞にも柿本人麻呂が詠んだ歌、「誰彼 我莫問 九月 露沾乍 君待吾」があります。訓読みすると、「たそかれと我を名問ひそ長月の露にぬれつゝきみまつわれを」となり、「『誰ですかあなたは?』と、わたしに質問しないで下さいね。9月の、露に濡れながら、あのひとを待つ私なのですから」という意味でしょうか、様々な解釈もありますが、艶っぽさもある歌だと思います。
ここで、ちょっと想像してみてください。この歌の待っているのを「ひと」ではなく、「商品」に置き換えるといかがでしょうか。ひたすら買ってくださる人を待ち続けている陳列棚の「商品」みたいで,ちょっと滑稽で愉快なシーンが目に浮かびませんか。
万葉集の歌の方は,恋人と待ち合わせしているのですが,「商品」のほうは,特に待ち合わせしているわけでもないので,その「商品」が欲しいと思っている人がいるところで置いてないと,永遠に待ちぼうけになってしまいます。
売れない。買ってくれない。と嘆く前に、その商品は、「誰が買ってくれるのを待っている商品なのか」を考えてみるのも大切なことではないかと私は思います。
ちなみに黄昏時は、またの名は「逢魔が時(おうまがとき)」とも言われています。常世と常夜の境目には、魑魅魍魎が跋扈すると昔の人は、警戒を促しています。
商売されている方は、自社商品や取り扱っている商品やサービスが、「誰に買って(利用して)もらいたいのか」を一度見直してみるのをお勧めいたします。
そして,逢魔が時までに,顧客に買って(利用して)いただきましょう。