Ride the WAVE 2025 ~初心者のためのデータ分析ワークショップ~
第4回を10月16日(木)にクロスパルにいがたの交流ホールにて開催しました!内容の一部をご紹介します。

▼データ分析から、いかにして「具体的なアクション」を生み出すか
第4回セミナーでは、質的データを分類する「決定木分析」を学び、それを用いてアルビレックス新潟レディースの実際の購買データを分析しました。本レポートでは、当日の学びが単なるツールの使い方に留まらず、いかにしてビジネスの現場で活かせる「意味のある発見」と「説得力のある提案」に繋がるのか、そのストーリーを追体験できるように構成しました。
▼データ分析の出発点:現場の「リアルな声」に耳を傾ける
今回のセミナーは、前回の講座で話題となったアルビレックス新潟レディースの試合を、実際に観戦した参加者からの体験共有で幕を開けました。
【共有された主な意見】
駐車場の課題: 「初めてスタジアムに行ったが、駐車場のキャパシティが足りず、観戦のハードルになっていると感じた」
おもてなしの可能性: 「試合は快勝で楽しめた。ただ、相手サポーターが少なかったので、アウェイのファンをもてなす企画があれば、もっとスタジアム全体が盛り上がるのではないか」
データ分析というと、つい数字の分析から始めてしまいがちですが、 データだけでは見えない顧客の体験や感情こそが、分析の出発点として最も重要である ことを参加者全員で共有するため、あえて冒頭でこの時間を設けました。

▼アルビL山本社長からのメッセージ
特別ゲストとして、アルビレックス新潟レディースの山本社長にご登壇いただきました。山本社長は、参加者が実際に試合へ足を運んだことへの感謝を述べられた上で、次のように語りました。
「私たちは課題ばかりの会社です。特に観客動員数は依然として厳しい。皆様からの斬新なアイデアや、データに基づいた具体的な提案を非常に期待しています」
「課題ばかり」という率直な言葉と、参加者への強い期待が語られたことで、会場の空気は一気に引き締まりました。 これから取り組むデータ分析が単なる練習ではなく、実際の課題解決に直結するものである という実感が、参加者一人ひとりのモチベーションを一層高めました。
▼「データインフォームド」な意思決定とは
本講座の目的は、分析ツールの使い方をマスターすることではなく、 「データインフォームド(データをもとに、より良い意思決定を行う)」 という考え方を身につけ、次世代のリーダーシップを育成することにあります。
データ分析の標準プロセス「CRISP-DM」の中でも、特に重要なのが、最初の「①ビジネスの理解(何が課題か?)」と、最後の「⑥展開(分析結果からどう行動するか?)」です。AIが進化し、中間の分析プロセスを自動化できるようになった今、 「何を問い、どう決断するか」という両端のプロセスこそが、人間にしかできない最も価値ある仕事 であることを改めて確認しました。
▼ワークショップ:仮説発見ツールとしての「決定木分析」
今回のテーマは、質的データを分類する代表的な手法「決定木分析」です。
◆決定木分析とは?
データを「はい/いいえ」で答えられる質問で次々と分岐させ、グループ分けしていく手法です。結果が樹形図で示されるため、 なぜその結論に至ったのかが直感的に分かりやすい のが大きな特徴です。
ワークショップでは、フリーツール「Orange」を使い、「天気や気分によって、試合を観戦に行くか行かないか」を予測するモデルを構築。「雨の日はほとんど行かない」「晴れで気温が良ければ88%が行く」といったように、予測精度そのものよりも、 人々の行動を左右する条件を発見するための「仮説発見ツール」として非常に有用である ことを体感しました。

▼ケーススタディ:購買データから見えた「明確な分岐点」
新たに提供されたアルビレックス新潟レディースの購買データを、決定木分析を用いて分析しました。その結果、ビジネスに繋がりうる、いくつかの興味深い「発見(インサイト)」が得られました。
- 発見①:顧客を分ける「魔法の金額」
- 顧客が「何を買ったか(チケット、グッズ、メンバーシップ等)」を分ける最も大きな要因は 「購入金額」 でした。特に 「8,000円」と「11,000円」に明確な分岐点(閾値)が存在 し、それを超える顧客はグッズやメンバーシップを購入する傾向が強いことが判明しました。これは、今後の価格設定やセット販売を考える上で、極めて重要なヒントとなります。
- 発見②:「2025年5月17日」に何があったのか?
- 顧客が「どの決済方法を選んだか」を分析したところ、 「2025年5月17日」という特定の日付 を境に、オンライン決済と現金決済の傾向が大きく変わっていることが分かりました。この結果から、「この日に決済システム上の変更や、何か特別なプロモーションがあったのではないか?」という 新たな仮説が生まれました。
このように、決定木分析はモデルが自動的に見つけ出した「分岐点」そのものに、ビジネス上の重要な意味が隠されていることがあります。
▼最終発表に向けて:データから「解釈を飛躍」させる勇気
分析結果を、いかにして説得力のある提案に繋げるか。そのヒントとして、観客動員数を10年で倍増させたある野球チーム様の成功事例を学びました。
- 分析結果: 「観客動員数は、チームの勝敗と強い相関がある」
- 普通の解釈: 「チームを強くすれば、客は増える」
- ある野球チーム様の解釈の飛躍(ジャンプ):
- しかし、勝敗はコントロールできない。ならば、 勝敗以外の価値で勝負できないか?
- そもそも、勝敗に一喜一憂するのは既存の「野球ファン」だけだ。動員数を本当に増やしたいなら、 ターゲットを「野球に詳しくないライト層」に広げるべきではないか?
彼らは「野球の試合」を売ることをやめ、 「野球をきっかけとしたエンタメ空間」 を提供するというコンセプトに転換。ボールパーク化やビアガーデンといった、試合の勝敗に依存しない施策で大成功を収めました。
この事例は、 データ分析の結果に縛られることなく、そこから大胆な「解釈の飛躍」を行うことで、いかに革新的な戦略が生まれるか を示しています。時には専門家としての常識や前提を捨てる勇気こそが、ブレークスルーを生むのです。

▼グループワークとまとめ
ある野球チーム様の事例を参考に、各グループでアルビレックス新潟レディースへの具体的な提案を検討しました。「アウェイサポーターへのおもてなし」や「ホームタウンの高齢者向け送迎バス」など、データと「解釈の飛躍」を掛け合わせた多様なアイデアが生まれ、最終発表会に向けた熱気が高まりました。

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。熱気が感じられ、非常に盛り上がってきたと感じています。
次回の成果発表会もぜひよろしくお願いいたします。
~IPCよりお知らせ~
11/13(木)~11/15(土)にかけてビジネスイベント「日々是新」を新潟駅近辺で行います。「日々是新」は新潟に芽吹く、まだ知られていないイノベーションを紹介し、最先端のテクノロジーや手法に触れることで、新潟の「イノベーション」の起点となるビジネスイベントです。今回のワークショップの成果発表会も「日々是新」の一環として行います。有益な情報が満載、新潟ではなかなか出会うことのない方が講師として登壇予定ですので、奮ってご参加ください。