プロジェクトマネージャー 松井 俊輔
夏休みを使って、約10年ぶりに中国・上海に行ってきました。2011年~2014年に駐在していたことや、帰国後も数回訪れていましたので、他の都市より知っている自負はありますが、変化のスピードが日本と比べて異常なぐらい速い中国。久しぶりの訪問で、どのように変わっているか楽しみでした。
現地では、在上海10年以上の日本人の友人や、旧知の中国人の友人と話す機会があり、いろいろな切り口で現在の中国の状況、中国から見た日本の姿を聞くことができ、現地でないと知れない情報が多くありました。また、日本以上に国レベル・社会全体としてコロナ対策が厳しかった影響もありますが、コロナ禍後の社会の変革が日本以上に大きく、社会システムがアップデートされているということを実感できる滞在でした。
滞在期間中に感じた社会システムのアップデートは、「集約化・共用化・自動化」を国の政策だけでなく、企業の経済活動としても、なかば強引に進められているということです。
◎集約化
・ほぼ全ての生活活動が、スマホアプリで行える。
・スマホアプリで注文 → 配達もしくは店頭受け取りという動線が完成されていて、お店で店員さんを相手に商品を注文する・買うという場面が激減。
◎共用化
・タクシーはタクシー会社以外にも、個人運用のいわゆる「ライドシェア型タクシー」が一般的になっていて、料金や運転手の評価を基準に選んで乗車できる(レクサスを使用したこのサービスは、ぜひ体験してもらいたいです)。
・「拼多多」のような共同購入プラットフォームを使い、安価に買物ができる。
◎自動化
・全自動運転タクシーが商用化されており、全く人を介せずに目的地に到着できる。
・地下鉄の駅やホテルに置かれた、無人シェルフ(スマート・キャッシュレス販売機)で、色々なモノを24時間購入できる。
これらは、社会全体の効率化という点ではメリットを感じましたが、高齢者のようにスマホが利用できない人を切り捨てている、配達人の負荷が高いという問題点もあると感じました。実際に中国人の友人は、高齢のご両親の日々の買物を、自分がスマホで代行しているとのことです。また、レストランに行くと、大勢の配達人が先を争うように大量の出前を持って出入りしています。
ただし、人手不足が喫緊の重要課題である日本では、省人化・効率化がここまで進まず、人手が余っている中国で、社会全体を挙げて突き進んでいる様子の違いは、考えさせられるものがありました。
一方、新潟のような特色のある日本の地方都市は、改めて「自然に囲まれ、リラックスできる環境で過ごせる様々な余暇の提供」という面で、ビジネスチャンスの可能性があると感じました。
いつ解雇されるかわからない競争社会で、長時間残業・休日出勤が常態化、日常生活が監視されているという強烈なストレスにさらされている中国人ワーカーは多くいます。
和食・洋食といったメニューの幅広さだけでなく、蕎麦・懐石料理のようなあっさりした味付けの料理から、焼肉・フレンチのようなこってりした味付けの料理まで幅広く楽しめる、多様性豊かな食事環境、スポーツ観戦やショッピングのような都市アクティビティと、スキーや温泉のような自然を楽しむアクティビティが両方楽しめるという、日本では当たり前の環境は、私たちが考えている以上に彼らにとって魅力的に見えるはずです。
先端分野での国際競争を完全に諦める、ということを勧めたいわけではありませんが、いま有るモノ、持っているモノの価値を見つめ直し、それらを十分に活用することでも、付加価値を付けられるという視点が必要と思います。またその視点で“地域の宝”を磨くことは、何も対・外国人というだけでなく、地域外の日本人から見ても、その地域が魅力的に映り、地域を訪れる人の増加が期待できるはずです。
よく言われる事ですが、旅行で日常の生活圏を離れてみると、いろいろ感じること・見えることがあると実感した夏休みでした。社会システムのアップデート以外にも、これもコロナ禍対策の結果であるマナー向上も目を見張るものがありました。字数が多くなりますので、また別の機会に触れられればと思います。
上海駐在時、タクシーに乗る時は助手席に座り、運転手と雑談するのが個人的な楽しみでした。しかし今回、アプリ配車で手配した車の運転手は、事前に行先を知っていることもあり、話しかけてもあまり会話をしてくれません。中国人の庶民の暮らしを聞かせてもらったり、中国語の練習として良い機会だったのですが、そういった触れ合いが無くなりつつあるのを寂しく感じるのは、旅行者の勝手な郷愁かもしれませんね。
「半分知っているけど、半分知らない」、という不思議な感覚で過ごした、久しぶりの上海でした。