プロジェクトマネージャー 松井 俊輔
新潟に住んで6年になりますが、今年初めて長岡花火を見に行くことができました。
テレビや動画とは違い実際に会場で見ると、視界いっぱいに広がる花火と破裂音の衝撃を同時に感じられ、素晴らしい臨場感が体験できました。長岡花火は、花火の規模だけでなく、信濃川の河川敷という絶好のロケーションを活かした演出も魅力の一つですね。新潟の友人たちが口を揃えて「絶対に見るべき」と勧めてくれたのに納得でした。
長岡花火は「越後三大花火」の一つであり、さらには「日本三大花火」にも数えられます。新潟には長岡花火以外にも、「日本三大〇〇」と呼ばれるものが数多く存在します。
有名なところでは、
・日本三大河川: 信濃川
・日本三大彦山: 弥彦山
・日本三大薬湯: 松之山温泉
・日本三大夜桜: 高田城址公園
・日本三大渓谷: 清津峡
などが挙げられ、皆さんも同意されると思います。
この「3」という数字、実はビジネスの世界でも効果的に使われています。今回は、「三大〇〇」から着想を得て、ビジネスで活用できる「3」にまつわる法則やコツをご紹介します。
まず、プレゼンテーションの際の「3つの要点」ルールがあります。人間の記憶に残りやすい話題は3つまでと言われており、キーメッセージを3つに絞ることで、効果的な伝達が可能になります。例えば新商品の説明では、詳細な内容を語る前に「“機能性”、“デザイン”、“コストパフォーマンス”の3点についてお話しします」とキーメッセージを挙げた後に、本題に入るといった具合です。スティーブ・ジョブズがプレゼンをする際に使った手法としても有名です。
次に、問題解決における「3つのなぜを繰り返す」テクニックがあります。ある課題の解決を探る時に、課題の本質に迫るため、「なぜ?」を3回繰り返し、課題の根本原因を明確にする手法です。有名な「トヨタ生産方式」の一つに「5回のなぜを繰り返す“なぜなぜ分析”」という手法がありますが、その簡易版といったところでしょうか。
さらに、チーム編成での「3人ルール」というものもあります。プロジェクトの中核メンバーを3人に絞ることで、意思決定のスピードが上がり、責任の所在も明確になる、というものです。他にも「ベテラン・中堅・新人でチームを組んで、チーム内でOJTを行い成長を促す」といった方法もあります。これまでプロジェクト進行が上手くいかなかった経験をお持ちの方は、試されてみてはいかがでしょうか。
では、なぜたくさん数字がある中で、「3」がこれほど重宝されるのでしょうか。
仮説の一つとして、人間の認知能力との関係があります。私たちの短期記憶は通常5〜9個の項目を保持できると言われていますが、「3つの要点ルール」でご紹介したように、確実に記憶し処理できるのは3つまでというのが脳科学専門家の見解です。つまり、3つなら無理なく把握でき、かつ十分な情報量も確保できるということになります。
また、人が心理的に自然な区切りと感じる文章構成の1つに、「始まり」「中間」「終わり」という3段落構成があります。これは伝わりやすい文章術の構造として、「序論・本論・結論」がよく使用されることとも一致し、私たちの思考パターンに合致しやすいのかもしれません。
能や歌舞伎などの日本の古典芸能や、ハリウッド映画やアニメーション、漫画、CMなどの作品構成で、よく用いられる三部構成の「序破急」(じょはきゅう)も同様の効果を狙っていると言われています。
以上を踏まえて、ビジネスの現場で「3」の法則を活用する具体的な場面としては、以下のようなものが考えられます:
・商品ラインナップの設計:エントリー、スタンダード、プレミアムの3段階で展開する。
・企画書の作成:背景・現状分析、提案内容、期待される効果の3部構成にする。
・マーケティング戦略:ターゲット、ポジショニング、メッセージの3要素を明確にする。
・業務改善:現状分析、改善案、実施計画の3ステップで進める。
新潟の「三大〇〇」から始まった考察ですが、ビジネスの様々な場面で「3」の力を活用できる可能性があることがお分かりいただけたかと思います。単なる迷信や慣習ではなく、人間の認知特性に基づいた効果的な手法として、ぜひ日々の業務に取り入れてみてはいかがでしょうか。
新潟にある「日本三大〇〇」を調べていて、「日本三大銘菓:「越の雪」(長岡)」というお菓子があるのを知りました。
その他の「三大〇〇」は全て体験しているので、このお菓子を早いうちに口にしたいものです。