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2024.07.31

「なんかいいよね」をやめてみる

プロジェクトマネージャー 松井 俊輔

 

流行りのスイーツをいち早く食べた感動や、目頭が熱くなった映画の魅力を友だちに伝えたい時、みなさんはどんな言葉や表現を使いますか?

 

私は、仕事半分・趣味半分の感覚で、話題になっているお店に行ったり、サービスを使うようにしています。新しいビジネスの情報や、そこで得た体験を皆さんにお伝えし、参考にしてもらえれば、という理由もありますが、この「感動を伝える」という自分の感覚的なものを他の人に感じてもらう行為、なかなか難しいものです。

 

先日、今年4月のオープン以来、行列が絶えない店として話題のスイーツ店「Charels-Henry(シャルル・アンリ)」に行ってみました。

スイーツを食べるには早いかな、と思う正午にお店へ到着しましたが、それでも既に満席、席に案内されるまで15分ほど待ったので人気なのがわかります。

このお店がなぜ人気を集めているのか、私の感想や分析を、皆さんにどんな風にお伝えしたら伝わりやすいか、美味しいお菓子をいただきながら考えていました。

 

この「感覚的なものを表現する」という行為、最近、テレビの番組で2人のコメンテーターのコメントが絶賛・NGとまったく逆の評価を得た場面を見て、プロでも本当に難しい作業と思いました。

 

まず絶賛された例は、食レポで有名な「彦摩呂」さんが、彼のキラーワードである「宝石箱」の使用を封印されて行う食レポです。

「牛タンの塩漬け」「トリュフ詰め七面鳥」「ロッシーニ風ステーキ」など、彼が初めて食べるメニューの食レポを行うのですが、そこはさすが彦摩呂さん、「宝石箱」を使わずに料理の美味しさがイメージできる絶妙な言葉を選び、表情も上手く使いながらレポートを行います。食レポのプロの面目躍如を感じた場面です。

 

逆に番組司会者からNGを出されていた例は、新潟が誇るカレー伝道師「一条もんこ」さんが、自分の好きなカレー店をオススメする場面です。

真剣な顔で、「(このお店は)スゴイっす」「(私はこれが)好きすぎる」という彼女の表現に対して、司会者から「(表現が)薄いわね」とダメ出しされてしまっていました。好きすぎるものを伝えるということで、主観的になりすぎたのかもしれませんが、司会者は「もんこさんならではの視聴者に伝わる」表現を求めていたのではないでしょうか。

資生堂「TSUBAKI」や、新潮文庫「Yonda?キャンペーン」のコピーライティングを手掛けた谷山雅計さんが書いた「広告コピーってこう書くんだ!読本」という本があります。

この本では様々なアイディアを生み出す方法について解説されていますが、アイディアを上手に生み出すには、「発想体質」になることが大切と述べられています。

そのためには、面白い事や楽しい事を体験した時に、「なんかいいよね」、という言葉を使わずに、自分が感じた事を「こういう理由で良いと感じた」「こういう工夫をしているから、カッコいいのではないか」と、掘り下げて表現する練習をする、という作業を勧められています。

 

「掘り下げて表現する」という作業は、なにもコピーライターや文筆家等の文章を書くことを生業としている方だけが必要とするものではなく、様々なビジネスの場面でも使える方法です。

 

サービス業のマーケティング手法の一つとして「サービス品質のギャップモデル」というものがあります。これは、「サービスを提供する側の品質、サービスを受ける側の期待のギャップを、様々な方法で埋める」というものです。いくつかある手法の1つに「サービス内容を事前に伝えることで、ギャップをできるだけ少なくする」があります。

 

飲食店であれば、メニューに載せる料理を料理名だけでなく、調理人自身のオススメコメントや写真でも伝える事で、「思っていた料理や味では無かった」という不満をお客さんに感じさせないことに繋がります。「言葉+味覚」の重複情報で、料理をより美味しく感じてもらえるという効果も期待できます。

また美容院であれば、カットやカラー後の仕上がり具合を、事前にお客さんがイメージしやすい言葉で説明したり、イメージ写真を共有することで、お客さんにより満足度を持ってもらえることが期待できます。

 

8月に入り夏休みを取られる方も多いと思います。いつもはお仕事で日々お忙しいと思いますが、時間が取りやすいこのタイミングを活かし、読んだ本や見た映画の感想を「“なんかいいよね”禁止&自分なりの表現」でできないか、練習してみてはどうでしょうか?

夏休み後のご自身のお仕事に、ちょっと良い変化があるかもしれません。

 

さてスイーツ店「Charels-Henry」がなぜ流行っているか、私の分析と感想です。

 

 ・世界の星付きレストランで経験を積んだフランス人パティシエが、一つ一つ丁寧に作り“手仕事”を感じる美味しいスイーツが楽しめる

 ・パティシエの技術 + 季節のフルーツ が両方楽しめる

 ・座った席からパティシエがスイーツを作っている姿を見られるライヴ感

 ・店内の装飾は、華やかな花柄と、ピンクとゴールドを基調にしたフェミニンな雰囲気

 

と、視覚・味覚・雰囲気が一体で楽しめる総合的なプロデュースが、特に女性に好まれているのではないか、と思いました。

このコラムを読まれた方のお一人でもお店に行かれれば、「私の表現」まずは合格でしょうか。

 

Charels-Henry

https://store.charles-henry.jp/

 

◇広告コピーってこう書くんだ!読本

https://www.sendenkaigi.com/books/media/detail.php?id=70

 

 

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