プロジェクトマネージャー 松井 俊輔
先日、趣味の楽器をコンサート形式で、仲間と演奏する機会がありました。
30代までは、体力に任せて臨機応変な対応が可能だったので、本番に向けた特別な練習をせずとも、それなりに満足な演奏ができていました。ところが、40代半ばを超えたあたりから、視力の衰えや反射神経の衰えからか、若いころと同じように手を抜いた準備で本番に挑むと、イマイチな結果が出るようになってきました。そういった事もあり、最近はできるだけの準備はして本番に臨むようにしています。
演奏の結果を振り返ると、本番を想定した「通し練習」を念入りにしていた曲は、満足のいくレベルでした。ところが、やはり練習時間の都合等で気になる部分だけを練習して、「後は当日、臨機応変に」と、打ち合わせですました曲は、それなりのクオリティとなってしまいました。
改めて、本番を想定した準備(段取り)の重要性を痛切に感じた出来事でした。
少数精鋭の社員数で、高い業績を継続して出している「株式会社キーエンス」という会社があります。元社員の方がキーエンスでの体験を書いた本が出版されたり、ビジネス記事で特集される場面も多い事から、高い業績を出している、いくつかの理由を見聞きされた方も多いと思います。
いくつかある理由の中で、今回ご紹介したいのは、「顧客先に営業に行く前に、社内で徹底的にロールプレイを行っている」ということです。
ロールプレイの目的としては、キーエンスのビジネスモデルが、相手先のニーズに対応した商品・サービスを提案するところからスタートすることに起因しています。相手先の状況、ニーズ(お困りごと)を分析し、提案ストーリーまで落とし込みます。この「事前準備」を、徹底的に行う事が高い成約率に繋がっており、準備(段取り)に重点を置いた営業を行っている事がわかります。
当財団の事業の一つに「食の商談会」があります。市内で食品を扱われる事業者さんと、食品バイヤーとの商談の機会を創出する事業で、先日開催された際、商談に同席する機会がありました。
商談の結果、バイヤーから商品の取り扱いについて、前向きな回答が得られる事業者さんに共通した点の一つが、「きちんと説明する準備(段取り)ができている」ことでした。
具体的に、どういった事を準備されていたかを挙げると
・創業のきっかけ、どんな変遷を経て現在の事業を行っている会社か?
・どんな得意な事、特徴を持っている会社か?
・その得意な事、特徴を活かした商品ラインナップはどういったものか?
・商談相手に提案したい商品は何か? なぜ提案するか?
・希望取引条件
です。こういった情報を、きちんと商談相手のバイヤーに伝えられる、また、情報を相手の手許に届けられる(残せる)準備ができていることになります。
バイヤーとの商談以外でも、「段取り」をしておくことが役立つ場面は様々です。
例えば、美容業や飲食業で、「お客様目線・お客様の立場」でサービス動線を見直してみる、ということが考えられます。例えば、
・お店の前までスムーズに来られるか? 車は停めやすいか?
・お店の入口は見つけやすいか? スムーズに入店できるか?
・ストレスなく、お店の方に話しかけられるか? スムーズにサービス利用・買物ができるか?
・気持ちよく、お支払いができるか?
・次回利用する動機付けを自然に持ってもらえるか?
という風に、お客様がサービスを受ける場面を分解し、サービスに過不足がないかを確認する方法です。
とはいえ、人間はどうしてもモノゴトを主観的に捉えてしまい、「お客様目線」の大切さがわかっていても、どのように見直せばわからない場合が多いです。
IPCでは、NEXT21にお越しいただいてのご相談方法以外にも、お店等にお伺いして現場を見ながらの売場改善提案や、商談準備のチェック等のリクエストに対応できます。ぜひ、「お客様に対応するまでの準備・段取り」の確認にもご利用ください。
前述のコンサートの感想を、何人かの方からいただきましたが、そのほとんどが「司会と、自然にアンコールへ持っていく盛り上げ方、良かったです!」と演奏以外の部分への評価でした・・・。演奏についての評価をお聞きしたかったところですが、これも司会と演出の段取りを、きちんとしていたからの評価と理解したいと思います。