プロジェクトマネージャー 松井 俊輔
先日、格安ながら満足感が高いことで有名な、全国チェーンのイタリア料理店に行ったところ、その店舗は全国でも数店の「セルフオーダーシステム」試験導入中の店舗でした。従来はテーブルの上に置いてあるオーダーシートに、「DG01・1(皿)」という風に、メニューに記載されているアルファベットと数字を記載して店員さんに渡すスタイルです。「セルフオーダーシステム」では、自分のスマホでテーブルの上に置いてあるQRコードを読み込み、ディスプレイにメニューオーダー画面を表示させ、各テーブルに設置されたメニューに記載の数字4桁を入力します。
・商品入力が4桁の数字だけ
・4桁の番号を入力すると、オーダー画面に商品名も表示される
という作業になるため、注文が簡単で早い、そして間違える可能性が低いと、シンプルながら感心させられるシステムでした。
他にも私が経験したものとして、IPC事務所近くにある牛丼チェーンの店舗ではリニューアルオープンに併せて、テーブルでオーダーした商品をカウンターに取りに行くスタイルに変更しました。また、ある回転ずし店に至っては徹底的にシステム化され、入店から退店まで一切、店員さんと言葉を交わす場面はありませんでした。
このように、大手飲食チェーン店では様々なシステムを導入して、できるだけ人手をかけないオペレーションが進んでいます。その理由は、ニュースで見ない日はないぐらい報道されている、「人手不足」に対応するためだろうというのは、想像に難くありません。もちろん、コスト削減対応の一面も併せ持っているはずです。
リクルートワークス社が2023年春に発表した、『未来予測2040』の労働需給シミュレーションでは、新潟県が一番早く労働供給量不足になるグループに入っています。また新しい働き手を30歳以下と仮定すると、新潟市が定期的に発表している「住民基本台帳」によると、30歳以下での最大ボリュームゾーンで一番人口が多いのは19~21歳の人(2023年時点)。その合計人口は約21,500人で、その年代以降は、減少の一方ということもわかります。
これらのデータから、新潟でも「人手不足」「欲しい人材の取り合い」になることは避けられず、経営リスクの一つになることが予想されます。
そのための対応としては、
①人材獲得力:魅力のある待遇を用意できるか
②省力化力:いかに人手をかけないスキームを作れるか
③環境整備力:魅力のある職場環境を用意できるか
をバランスよく進める事になると思います。
しかし①人材獲得力は、どうしても資本勝負になってしまい、大手資本企業が有利になるため、中小企業においては、②省力化力、③環境整備力強化を検討することになります。
②省力化力の取組みの第一段歩としては、例えば現在5人で行っている業務を4~4.5人でできる方法を考え始めてみる、社長が担当している業務を従業員に半分でも任せられないか検討してみる、社内で行っている業務に外注できる業務がないか考えてみるなど、現在の作業方法やルーチンを見直すことです。
国としても、令和5年度補正予算で「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」を実施し、省力化の後押しを予定しているので、チャレンジできる業態・業種の方は、補助金の動向を注目されてはいかがでしょうか。
③環境整備力強化の第一歩としては、時短制度の導入や、副業の承認等、「多様な働き方ができる」方法を検討してみるのはどうでしょうか。いろいろな背景を持った人材の受入れ、社内体制の変更、働き方の多様化等、手間がかかる点も多いですが、1つの仕事を複数人で担当するという、②省力化力とは逆の方向(ワークシェア)で考えてみるのも、ヒントがみつかるきっかけになるのではないでしょうか。
どちらも事業スタイルを大幅に変える事になるため、一朝一夕での導入は難しいと思いますので、考える時間を作りやすい年末年始、まずは検討してみる事から始めてはどうでしょうか?
また検討段階で出てきた課題等を、IPCの窓口相談を利用していただき、実行に向けて整理する場としてご利用いただければと思います。
少し早いですが、今年一年の当財団ご利用のお礼を述べさせていただきます。引き続き皆様のビジネスシーンの一助となりますよう、2024年もよろしくお願いいたします。
◇令和5年度補正「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金
https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2023/k231129001.html