2016.03.31
プロジェクトマネージャー春川英広
父は言う。
我が社は創業以来「高級品市場」で地位を築いてきた。
ここで、さらなる成長を手にするために、この市場をもう一段深掘りしてみよう。競合がついて来られないほどに「こだわり」を極め、業界の一歩先を行く新たな業態を創ってみせようじゃないか!
娘は言う。
我が社は大きくなりすぎた。この組織を支えるのに「高級品市場」は小さすぎる。
成長を維持するためには、「カジュアル市場」に斬り込みボリュームを確保することが急務だ。これまで高級品市場で培った我が社のブランド力と調達ネットワークがあれば、カジュアル市場でも、競合のワンランク上を行く、独自の地位を築けるはず。今こそ、新たな市場開拓に打って出よう!
父と娘。会社を発展させたい想いは同じなのに、二人が描く戦略は重ならない・・・
■皆さんは覚えていますか?
昨年の今頃、大塚家具のニュースが話題でした。当時、本当にこのような葛藤があったのかは知る由もありませんが、結局、父と娘は別々の道を歩むことになりました。
インターネットなどの情報によると、父・勝久氏が新たに設立した匠大塚株式会社は、4月下旬に、インテリアの総合商談スペース「匠大塚日本橋・デザインオフィス」をオープンするそうです。業態もさることながら、社名に「匠」を冠したあたりからも、ハイエンドユーザーをターゲットにするのだという明確なこだわりが窺えます。
(
匠大塚 株式会社)
■勝手な想像ですが・・・
父・勝久氏は、創業以来大切にしてきた自社の「こだわり」に基づき戦略を発想していたのではないでしょうか。
一方、娘・久美子氏は、成長した組織や、変わりゆく市場環境を冷静に分析し、それに基づき戦略を発想したのだと思います。
こだわりを貫き、自ら信じた「経営道」を結実させたい創業者。成長により生じてしまった「組織と戦略のかい離」を最適化し、新たなステージに進みたい後継者。
あのニュースの本質は、「熱い想い」がぶつかり合うことで起こった、前向きな「細胞分裂」だったのかもしれません。
■チャンスを育みましょう!
組織が現状に慢心せず「新たな道」を拓き続けるためには、「異なる考え方」など多様性を積極的に受容していくことが極めて重要だと考えます。
多様性は時折、組織に葛藤を生んだり、択一しがたい複数の選択肢をもたらしたりすることもありますが、おそらくこの「葛藤」や「選択肢」のことを、“チャンス”と呼ぶのだと、私は信じています。
大塚家具のように大胆な「細胞分裂」は難しいですが、“チャンス”に出会ったら、小さなプロジェクトチームなどを組成し、ローリスクに試してみてはいかがでしょうか。
★ちなみに、IPCでは・・・
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