プロジェクトマネージャー 松井 俊輔
今年のカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した「怪物」を、先日見てきました。あらすじを簡単にご紹介すると、「こども同士」のケンカが、母親の視点、先生の視点、こどもの視点と3つの異なる視点で語られ、ケンカによって起こった事件とその顛末が、各々の視点・想いによって全く違って描かれるという内容です。映画が好きな方であれば、黒澤昭監督の「羅生門」のような手法で撮られた映画、という説明をするとわかりやすいでしょうか。
映画を見終わった後、みなさんがどんな感想を持ったのかが知りたくなり、ネットの掲示板で感想を読んでみました。「1つの事柄を3つの視点で語る」という、構成の特徴以外に、この映画が「人間の行動は首尾一貫していない」「ある行動も、見方によって善にも悪にもなりえる」という、「人間とは?」という事を投げかけるメッセージも持っているためか、見方・感じ方・解釈の種類は多岐に渡ります。個人的には「自分では全て見えている」、と思っている事の危うさを突き付けられた映画でした。
昨年末、“ChatGPT”が発表されてから、急速に生成型AIの認知と活用場面が増えました。「こうすれば、今までのルーティーンワークから解放される」といった、業務効率系の話題だけでなく、「AIが発達すると、奪われる仕事がある」といった危機感を喚起する話題、「AIが使いやすくなったとはいえ、やはり使い方にはコツがある」、「人間が作ったモノか、AIが作ったモノかの判別は?」といった、様々な観点、立場での論点があることも、生成型AIの認知が一気に広がった理由と思います。
私も実際に、①セミナーのアジェンダ案の作成、②文章の校正、③SWOT分析、④絵を描いてもらう、など色々な作業を、ChatGPT(OpenAI社)、bing(マイクロソフト社)、bard(Google社)各社の生成型AI使って行ってみました。その中で、④絵を描いてもらう以外の利用では、AIを操作する人自らが、AIに作業をさせると同時に、自分の視点を持つ重要性、AIが返してきた結果と違った視点で、出力結果を検証する作業の必要性を感じました。
AIの出力結果を成果物として使用するには、「判断基準」「信ぴょう性」等について、まだまだ怪しい部分があります。また、いつかは機能として実装されるかもしれませんが、現時点では、「行間を読む」「書かれている内容から推測する」といった部分については、人間に分があると出力結果を見て思いました。こういった理由から、現時点では人が共同作業を行うパートナーとしてAIも利用する、というのがAIの有効な利用方法ではないでしょうか。またその方が、作業時間が短縮できるだけでなく、より良い成果物の作成に繋がると思います。
新しいサービスを提供する時や、新商品開発に取り組まれる時、自分の視点だけ、組織の視点だけで取組むより、いろいろな人の目で見てもらい、評価を受けてから提供した方が、失敗が少ない例が多いと感じます。創業のタイミングでも、ご自身が提供するサービス・商品について、まずは身近なお友達に感想を求めることは大変重要です。
1,000件以上の新規事業創出に携わってこられた、起業家・投資家・経営者の肩書を持つ麻生要一さんをお招きして、IPCでセミナーを開催したことがあります。その時に麻生さんがおっしゃっていた、「新規事業を成功させるためには、300回以上、お客様に試してもらい改善することが、私のやり方です」という言葉が強烈に記憶に残っています。自分の価値観や視点だけで事業を進める危険性と、利用する側(お客様)の視点が最も重要であることを実体験としてお持ちの方ならではの発言だと感じました。実際に「お客様に試してもらう」という行為が難しい場合でも、「他者に問う」という行為に置き換えて実行することが、新サービス・新商品の精度・練度を上げ、結果的に成功に近づけるために必要である、と言えます。
自分では思いつかない、自分には無い視点を得る「他者に問う」という作業に、AIを利用するといった方法も考えられます。いろいろなアイディアを出すという作業はAIの得意分野であり、これまで費用や時間がかかっていた部分を大幅に削減できる効果が期待できるのではないでしょうか。
IPCでは、相談対応の中で、みなさまからの「他者に問う」相手としての機能も持っています。私たちに直接反応を聞くという方法から、みなさまのサービス・商品に合った「他者に問う」方法のご提案まで、いろいろな形でご対応できますので、ぜひご利用いただければと思います。
また、6月21日(水)は、「はじめてのChatGPT!AI活用セミナー」もオンラインで開催します。主に、「生成系AI」の代表である“ChatGPT”の活用方法を紹介する内容となりますが、まずは「話題になっているAIについて触れてみたい」という方にはぴったりの内容となっていますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。
生成系AIを使って画像を作ってもらう方法ですが、残念ながら“ChatGPT”だけでは対応していません。私は、“ChatGPT”で画像を作る命令文を作り、“Stable Diffusion”という無料のAI画像生成ソフトに、その命令文を入力して画像を作っています。命令文では、「アジア人の男性」「髪は七三分けで」「肌は黒く」というように、作ってもらいたいモノの具体的な指示を書くのですが、「この組み合わせはないのでは?」と吹き出してしまいそうな面白い画像が生成されたり、同じ命令文でも再読み込みさせると違う画像が生成されたりと、なかなか面白いです。
セミナー用資料を作る時に無料素材を探す場面で、AI画像生成ソフトを上手に使うと手間も時間も大幅に削減できる可能性を感じています。
◇はじめてのChatGPT!AI活用セミナー~業務効率化を実現するためのAIの使い方
https://niigata-ipc.or.jp/seminar_event/20739/
◇麻生要一さんインタビュー記事
https://dimension-note.jp/articles/interview/4928/