プロジェクトマネージャー 松井 俊輔
様々な規制が緩和され、コロナ禍以前の状態に近い形となった今年のゴールデンウィーク、みなさんはどのように過ごされましたか?
私は小学校の国語の授業以来、俳句を詠んだ経験は無いのですが、新潟県民会館で開催された“夏井いつき句会ライブ“に参加してみました。車での移動時間と、ラジオの放送時間が重なった時に、夏井いつきさんの番組を聞くことがあるのですが、リスナーの投句への歯に衣着せぬ、夏井さんの論評を聞くのが面白くて、これをライブで楽しめたらどれだけ楽しいのだろう、とワクワクしながらの参加です。
会場は、ほぼ満員状態。夏井さんが舞台に出てこられると、あっという間に会場の熱気が高まり、ライブに参加された皆さんの「夏井さん好き」度が伝わってきます。アイドルのコンサートで見かけるようなウチワを手にした句会ライブ常連らしき方、ラジオで何度も投稿句が採用されている方など、手練れの参加者が多い中、素人の私がついていけるのか心配になります。
ところがライブが進むとそんな心配も全く無用なことがわかってきます。初心者が作りやすい俳句の「型」をわかりやすく教えてもらえたり、俳句にかかせない「季語」がわかりやすくまとめられたパンフレットが配られたりと、自分でもできるかも?と思い始めてきます。
もちろん、夏井さんの指導力、全国を回って何度もイベントを開催されてこられている経験値に負うところも大きいと思います。
私が今回のライブで気づきを得られたのが、夏井さんが何度もおっしゃる「季語の力を上手に使いなさい」という言葉です。私は、季語とは季節を表す言葉で、俳句に必ず入れなければならない約束事ぐらいしか理解をしていませんでした。句会ライブでは、夏井さんが舞台の上で、参加者が会場で創作した俳句を添削されます。その中で、「季語それぞれが持つ、定性的な情景描写や、季語に込められた暗黙知の意味を活かした方が良い」、と論評される場面が多いのです。
夏井さんが話される「季語が持っている力」とは、①詠み手は、五七五・17文字で表現しないといけない“制限”、②読み手は、色々な解釈が可能な“自由”、という別々の立場にあり、詠み手と読み手を橋渡しする役目を「季語」が持っていることを伝えたいのでは?と思いました。
別の言い方をすると、「季語」は詠み手と読み手の目線を合わせる大切なキーワード、ということかもしれません。また「季語」が上手く機能することで、詠み手と読み手の間に良好なコミュニケーションが作られる、という事も伝えられたかったのかもしれません。
IPCの相談窓口で、ご相談者さんから、「SNSでお店の情報や商品の魅力を発信しているが、フォロワーの反応がいまいち」「チラシやショップカードを配布しても、効果が感じられない」というご相談を受けることがあります。
実際に発信されているSNSの内容や、作られたチラシを拝見すると、「お店とお客さんの目線合わせ」がスムーズに行えていないため、効果が限定的なのでは?と感じることが少なくありません。
例えば、
・専門用語や、その業界を詳しく知る人しか理解できない表現を使っている
・「何でもできます」のような言葉が使われていて、逆にどんな事をお願いできるか、具体的にイメージしにくい
・読んだ人が、自分自身が求めているコトと、書かれている内容を結びつけにくい内容になっている
などです。
サービスを提供するお店側と、お客さん側の持っている情報量や知識・スキルを比較すると、お店側が圧倒的に勝っていることがほとんどです。そうすると、お店側が当たり前にやっている事や、当たり前に持っている技術・こだわりを、プロが使うそのままの表現や用語を使ったのでは、お客さんには伝わりにくい、ということは簡単に想像できると思います。
そうすると、
・一般的な言葉、その業界を知らない人でも理解しやすい言葉や表現を選ぶ。
・読んだ方が、その人の日常生活の中で「自分ごと」として置き換えてイメージしやすい、例(たとえ)を紹介する
・「読んだ方が、こんなことに困っているのでは?」を想定した情報提供
などの「お店がお客さんの目線に合わせる」ことができた内容に進化できるはずです。
さらに、お店とお客さんとの間に良好なコミュニケーションが作られる、といった効果も期待できます。
とは言っても、その業界や商品に精通しているプロの皆さんが、改めてあまり知らない人の立場で表現を工夫する、というのは難しい場合が多いと思います。
そういった時に、ぜひ、IPCの窓口相談のご利用をおススメします。
・客観的な視点で、みなさんの想いが「どう見えるか?」
・みなさんの想いが「伝える」だけで終わらず「伝わる」まで昇華できているか?
・「想いが伝わる」が上手くいった事例の紹介 等
いろいろなご対応が可能です。ぜひ、みなさんとお客さんを繋ぐ「季語」の使い方が適切か、といった気軽な感覚でご相談ください。
新潮社のWEB媒体(考える人)で「お客さん物語」というコラムを連載されている、稲田俊輔さんという方がおられます。本業は料理人・飲食プロデューサーですが、著書が多数あることや、他のWEB媒体でも活躍されているのでご存知の方もおられると思います。
このコラムは、稲田さんがこれまで出会った“個性豊かなお客さん”を観察し、なぜ、そのお客さんが、お店側にとって理解不能な行動をとるのか?、お店側の想いと“お客さん”の言動とのギャップについて考察し、稲田さんならではの仮説を、お客さんへの愛に溢れた、そしてウィットに富んだ文章で綴られています。
残念ながら5月2日の掲載分で最終回となっていますが、「お客さんとの目線合わせ」に興味を持たれた方には、ぜひお勧めしたいコラムです。
◇新潮社・考える人
https://kangaeruhito.jp/