プロジェクトマネージャー 松井 俊輔
47都道府県の中で、一番画数の少ない都道府県、そして多い都道府県はどこか、ご存じですか?
調べてみると、最小画数の県は山口県で15画、そして、最多画数・37画の県は2つあり、そのうちの1つは鹿児島県です。「4文字」の県なので納得の結果ですが、もうひとつは「3文字」の県。みなさん、おわかりになりますか?
答えは新潟県です。「新潟」と書く度に画数が多いなぁと思っていましたが、画数を数字であらわすと、我々新潟ゆかりの人間は、住所や所属先を書く度に、画数の少ない県の人より、多めの作業をしていることが改めてわかります。
最近、この「画数」に関する面白いニュースが2つありました。
1つ目は「子供の進学準備で、“新潟”という字を持ち物全てに書かなければならない手間を省略するために、住所スタンプを購入した」という、新潟県在住の主婦のつぶやきが取り上げられたニュース。そしてもう1つは、一文字で57画もあるという漢字「ビャン」が使われる中国・西安名物の「ビャンビャン麺」が、日本でインスタント麺として買えるようになっただけでなく、メニューとして提供する飲食店のオープンが、「ビャン」の字の面白さとともに注目されたニュースです。
現在の中国本土で使われている漢字・簡体字は、1950年代に国民の識字率を上げるために、中国政府が古来から使われてきた繁体字を、公式に省略化することで生まれ、現在に至っています。日本に置き換えると旧字体「學」のように画数の多い漢字を、特にこだわらないといけない場合を除いて、画数が省略された「学」であらわすのが一般的になっているのに近いですね。
昔の人に比べて、字を書く労力を「節約」できている現代の我々は、幸せなのかもしれません。
最近、ニュースや新聞で目にすることが多くなってきた「スタグフレーション」という言葉。景気が後退していく中で、インフレーション(物価上昇)が同時進行する現象のことを指し、景気停滞を意味する「スタグネーション(Stagnation)」と「インフレーション(Iinflation)」を組み合わせた言葉です。様々な生活必需品の急激な値上げが起こっているのに、給与の上昇が追い付いていない現在の日本は、スタグフレーション期に入っていると見る専門家が多いようです。
このスタグフレーションが厄介なのは、個人で取れる対策方法が「節約」ぐらいしかない、ということです。しかし節約だけをしていたのではジリ貧になってしまいますので、効率化できる部分はとことん効率化(節約)し、先を見据えた必要な投資を、時間がかかってもあまり費用がかからない方法で並行して行う、という戦略を検討しなければならないのではないでしょうか。
日本各地でホテル・旅館を運営する株式会社星野リゾートでは、以前から従業員1人でチェックインや客室清掃など複数業務をこなす「マルチタスク人材」の育成を行っていました。
コロナ禍で日々変わる業務環境への対応や、次々と打ち出される「Gotoトラベル」キャンペーン等への制度対応を迅速に行うために、デジタル技術を事業運営に結び付ける必要性に迫られ、これまでのマルチタスク人材の任務に、新たに「デジタル業務」を加えています。
具体的には、現場スタッフがノーコードツールを学んで星野リゾートオリジナルのプログラムを開発できるようにし、客室から大浴場の混雑状況をリアルタイムで確認できるサービスや、婚礼関係の予約が入ると、その情報に連動して社員のシフト調整を自動で行うサービスを導入するなど、宿泊客と直接向き合う現場の従業員だからこそ気づける課題を、ITの活用で自ら解決できる体制づくりに取り組んでいます。
新しいスキルを身に着けるために必要な時間や作業を考えると、億劫さが先に立ち腰が引けてしまいますが、毎日少しずつ取組む「100(1000)時間の法則」は参考になる取り組み方です。現在は、様々な大学が提供している資料やYoutube等の動画が無料で利用できる環境が整っていますので、まずは興味がある分野からチャレンジしてみるというのも悪くないのではないでしょうか。
星野リゾート社のように、プログラム技術を身に着けるのであれば、プログラム言語(Pythonやノーコードツール)の基礎を学ぶという事が考えられますし、Googleアナリティクスの利用方法を学び自社サイトのアクセス解析ができるようになる、というのも現状分析や新しい戦略を練る基礎情報を扱えるスキルとして役に立つのではないでしょうか。
省略(節約)して効率化を目指すべきものと、一見面倒でもこだわって習得する努力をすることの見極めとバランスが、スタグフレーションを乗り切るヒントの一つになるのではないかと思います。
もし、ビャンビャン麺の「ビャン」の字が簡体字で省略されていたら、ここまで話題になることはなかったでしょう。また、他にも西安名物として有名な餃子や「西安バーガー(肉夹馍)」の陰に隠れて、西安の伝統ある名物料理としての存在感が薄くなっていたのではと考えると、次から「潟」の字を書くときは面倒と思う気持ちを持たず、日本で最多画数の県名に住んでいることに誇りを感じながら、丁寧に清書したいと思います。
◇Wikipediaの「ビャンビャン麺」の説明
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%93%E3%83%A3%E3%83%B3%E9%BA%BA
◇京都大学が提供している無料のPython入門テキスト
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/265459/1/Version2021_10_08_01.pdf
◇100時間の法則
1つの事に1日30分・200日間集中して取組むと、ある一定のスキルを手に入れられるという方法です。その有効性は広く知られており、1000時間の法則は、さらに10倍の時間をかけて、より高いスキルを手に入れる事を目標とします。