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2021.11.15

もう見られない「上から目線」

  プロジェクトマネージャー 松井 俊輔

 今月初め所用があり、久しぶりに新幹線で東京に行ってきました。新潟駅の新幹線ホームに上がってみると、何か、違和感が・・・。

 そうです、いつもなら当たり前のように停まっていた、大きくて頼もしい外観のアイツ、E4系新幹線「Max」の姿が見えないのです。 

 利用していた時は、車内階段の昇り降りが面倒、座席にコンセントが無い、フラットシートの背もたれが倒れない等々、この車両の不便さについつい愚痴ってしまいましたが、もう乗る事ができないと思うと、目線が高い2階席から眺める田園風景が見られない、“吉乃川酒造”の広告「東京新潟物語」でキュンとすることができなくなる等、新潟歴3年目の私でも寂しさを感じます。新潟生まれの方々の“Max・ロス”は、私が感じている寂しさの何倍もあるのでは、と思うと切なさがこみ上げてきます。  Maxの引退は、「大量輸送時代の終焉」が理由の1つとされています。確かに、最新型・E7系車両の余裕ある客室空間と、その空間だからこそ提供される快適さを体験すると、効率性より快適性に時代の価値観が変わってきていると実感します。

 “大きなボリュームを効率的に対応する“から”規模が小さくなっても丁寧に対応する“という動きは他の分野でも見られます。 5年に1度開催される、世界有数のピアノコンクール「ショパン国際コンクール」があります。先月開催された18回大会では、日本人が入賞者として2名選ばれたというニュースで注目が集まりましたが、コンクール参加者が選んだピアノのメーカーの話題でも注目が集まりました。

 “有名コンクールの正式ピアノとして認定される”、“複数の公式ピアノメーカーの中から、コンクールの上位入賞者に選んでもらえる“というのは、ピアノメーカーに取って最高のPRになりますので、世界中のピアノメーカーがコンクールの公式ピアノとして認定されること、そしてもちろん、コンクール参加者に選んでもらう事を目指します。このあたりに興味がある方は、「蜜蜂と遠雷」(恩田 睦)や、「羊と鋼の森」(宮下 奈都)などのピアノを題材にした小説を読まれると、より楽しめると思います。 

 今回のショパン国際コンクールで選定された公式ピアノは、100年以上の歴史がある、スタインウェイ、ヤマハ、カワイと、ピアノを弾かない方でも聞いたことがある有名メーカーが並びます。その中で今回注目を浴びたのは、イタリアのファツィオリ (FAZIOLI)というメーカーです。前々回の16回(2010年)から公式ピアノメーカーとして採用され、なんと、今回は優勝者を含め、上位入賞者のうち半数がこのメーカーのピアノを選んでいます。 

 他の有名メーカーは100年以上の歴史がある中で、1981年創業とまだピアノメーカーとしては若いファツィオリ社が公式ピアノメーカーとして選ばれているのも驚きです。また他のメーカーが年間何千台という大量生産を行い大きな市場を狙う中、ファツィオリ社は生産方法・使用する材料へのこだわりから年間120130台の少量生産で、このピアノでしか得られない音色を求める限られた人に製品を届けるというスタンスを取り、他のメーカーと思想が異なります。

 ファツィオリ社を創業したパオロ・ファツィオリ氏が、世の中に自分が納得する音を奏でるピアノが無いため、「無いなら自分で作ってしまおう」と思ったのが起業のきっかけというのも、ユニークです。 

 111日(月)に開催した「IPC30周年祭」で「社内起業」の事例として、(株)かたれ。代表取締役・八木 翔和 氏にお話を伺いました。八木氏が所属していた会社に寄せられた、会社業務の守備範囲外の依頼に、ご自身で対応できる事例から応えていき、問い合わせが順調に増加してきたため、事業としての手ごたえを感じたということが、社内起業に取組んだきっかけ、とのことでした。

 初期の依頼内容は規模が小さく、利益を生み出すような内容は少なかったのですが、一つ一つ丁寧に対応していった中で、それぞれの依頼内容は個別だったものが、繋がりを持つようになり、事業化するまでの目途がたった起業ストーリーでした。 

 人の価値観は一定ではなく、また時代によっても異なるため、効率性を追求するか、こだわりを狙うのかに正解はありませんが、ピアノメーカー・ファツィオリ社、かたれ。社の事例から、最初は小さなニーズから始まったものでも、事業として成り立つまでに成長する可能性があることがわかります。ユーザーのニーズに向き合う中でビジネスチャンスを見つける重要性がわかる好例と感じました。ご自身が思いついたアイディアが実現するかどうかわらかないので、恥ずかしくて誰にも相談できない、という段階でも、何から始めればよいかわからない新しい事業への取組み段階でも、アイディアの壁打ち相手を見つける事は実現化の有効な方法です。雑談ベースでも結構ですので、IPCを「話し相手」としてご利用いただければと思います。 

 Max・ロスを埋められる、上越新幹線に乗る時の楽しみは何でしょうか?個人的には、毎朝の通勤時にNEXT21の前で出会う、新潟中央幼稚園のMaxそっくりなスクールバスを目で追って寂しさを埋めています。

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