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2020.06.15

苦悩を突き抜けたその先に

プロジェクトマネージャー 松井 俊輔

「運命」「田園」「月光」「熱情」。これらの標題が付いた曲を書いた作曲家をご存じでしょうか?
学校の音楽室に必ず飾られていた、モジャモジャ頭でしかめっ面の男の人。

ベートーヴェンですね。

新型コロナが流行しなければ、今年は日本中、いや世界中でベートーヴェンの音楽が、様々な場で鳴り響く年になるはずでした。1770年生まれのベートーヴェンは、2020年の今年、生誕250年なのです。

クラシック音楽業界では、有名な音楽家の生誕100年や没後100年のように、切りのよい年に、その音楽家が作曲した曲を集中してコンサートで演奏したり、CDを発売する習慣があります。
クラシックで一番有名な作曲家といっても過言ではないベートーヴェンの生誕250年なら、世界規模で催しが予定されていたというのはお判りいただけると思います。

 
ベートーヴェンを語るうえで、「難聴を乗り越えて数々の名曲を作曲した」という事は誰でも知っていることですが、調べてみると、耳が聞こえにくい以外にも、その生涯は苦難の連続で驚かされます。

・ベートーヴェンの父親は大酒飲みだったため、祖父の援助で生計がなんとか成り立っていましたが、3歳の頃に祖父が亡くなると生活はたちまち困窮を極めました。

・16歳で念願かなってモーツァルトに教えを乞うためにウィーンに向かいましたが、すぐに母親が危篤状態になり、故郷に帰らないといけない状況に。ベートーヴェンが故郷に帰るとすぐに母親は亡くなりました。

・父親は相変わらず飲んだくれだったので、家計を支えるために音楽家以外の仕事をいくつも掛け持ち状態。父や幼い弟たちの世話に追われる毎日でした。

・21歳の時にベートーヴェンの才能を認める友人たちの援助を受けてウィーンに移住。ピアニストとしての名声を得ます(やっと明るいエピソードが出てきて、少しホッとしますね)。

・20代後半より難聴の症状が出始めます(原因は諸説あり。また暗い雰囲気になってきました)。

・32歳の時に、作曲家としての行き詰まりを感じて遺書を書き自殺を考える(1回目のスランプ)。

・ハイドンやモーツァルトなど先人の曲を研究して、従来の型にはまらない新しい作曲技法(一種の型破り)に挑戦し成功! 無事にスランプを乗り越えます。その後、約10年間は「交響曲第3番“英雄”」「交響曲第5番“運命”」「交響曲第6番“田園”」「ピアノソナタ23番“熱情”」「ピアノ協奏曲第5番“皇帝”」等、多数の傑作を生みだした時期になります(少し安心)。

・40歳の頃、完全に耳が聞こえなくなり、さらに慢性的な神経性腹痛や下痢に苦しめられる状態に(またもや暗雲立ち込めてきます)。

・加えて、後見人となった甥が自殺未遂を起こすなど問題行動を頻発。その心労もあったのか、また作曲ができなくなります(2回目のスランプ)。

・今度はハイドンやモーツァルトよりさらに前の時代の作曲家・バッハの作曲技法を研究し、対位法(複数の旋律を独立性と調和を持たせながら重ね合わせる作曲技法)に取り込むことでスランプを克服。このスランプの後に、「第九」を作曲します。

・56歳で死去

 
ベートーヴェンを評すときに「不屈の人」という表現がよく使われますが、「不屈」の文字通り、数多くの苦難を乗り越えて名曲を生み出してきたことがわかります。

2回あったスランプの乗り越え方は、どちらも「自分のスタイルを変化させる挑戦」と言えるのではないでしょうか?これまで成功してきた得意なスタイルを自ら捨て、新しいスタイルに変革させるのは、大変勇気がいる決断だったと思います。

 
これは新型コロナの影響で、これまでの事業スタイルを変えざるを得ない、正解がわからなくても新しいことに挑戦せざるを得ない、現代のみなさんにとって参考になる姿勢ではないでしょうか?
音楽の先人である、バッハ、ハイドン、モーツァルトの作品を研究し、そこから良いものを選び出し新しく自分のスタイルとして生み出す、というベートーヴェンが取った方法は、基本的なものを応用して新しいものを考え出す、というやり方です。

 
今回のコロナ禍の状況では、「ご自身の事業の軸や、これまでの顧客との関係性を見つめなおす」「成功事例から自社が取り入れられる事はないかを考える」という作業が、具体的な例になると思います。コロナの影響でまだまだ苦しい状況は続くと思いますが、そんな時だからこそ、足元を見つめなおすというきっかけづくりに繋げていただければと思います。

 
“苦悩を突き抜けて歓喜に至れ”

 
ベートーヴェンが知人への手紙の中で書いたというこの言葉、彼の生き様に勇気をもらい、皆様には新型コロナで受けた苦悩を、ぜひ突き抜けていただきたいと願っています。

 
最後に私の個人的趣向が強いですが、BGMとして楽しめるベートーヴェンの曲を何曲かご紹介して、今回のキーワードスクェアを終えたいと思います。CDを買わずとも、YoutubeやSpotifyを利用すると無料で聴くことができます。ベートーヴェンの音楽に刺激されて、良いアイディアが生まれるかもしれませんね。

・ロマンス第1番
ヴァイオリンソロの曲です。第2番の方が有名ですが、私は穏やかで渋めのこちらの方が好きです。

・ヴァイオリン協奏曲
メンデルスゾーンやチャイコフスキーのような派手さは無いですが、全体を通して「木質」の聴感が聴き疲れしません。ピアノが好きな方はピアノソロバージョンもあります。

・ピアノ協奏曲第4番
第5番“皇帝“が有名ですが、メロディに耳がいってしまうと思います。軽やかで明るい曲調のため、心地よく聞き流せるのは4番と思います。

・弦楽三重奏曲集
室内楽としては弦楽四重奏曲の方が有名ですが重厚過ぎるので、BGMとして流しておくにはこちらの方が耳心地が良いです。余談ですが、ハイドン、モーツァルトの弦楽四重奏曲は聞きやすいのでBGMとして最適です。

・弦楽四重奏曲の弦楽合奏版
弦楽器4本だとなぜか小難しく聞こえるのが、弦楽合奏だと不思議と耳障りが良く楽しめます。

・交響曲第1番
第3番“英雄”、第5番“運命”は劇的過ぎてBGMに適さないと思います。軽やかで可愛らしい曲です。

・交響曲第9番「合唱付き」の第1楽章と第3楽章
2楽章や4楽章のようにあまり劇的ではないのと、美しいメロディに溢れているのでBGMとして適しています。

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