マーケティングのヒントはこんなところにも

2019年08月15日| Keyword Square 松井 俊輔

プロジェクトマネージャー 松井 俊輔

 連日「猛暑」「体調管理を…」というニュースを耳にし、暑さが倍増するような気がしていますが、みなさん体調くずされていませんか?暑すぎるのは体力的にも精神的にもツライものがありますが、私は先日心が豊かに満たされる「熱い思い」を感じるエンターテイメントを体験してきました。

 

「blast」(ブラスト)という、マーチングバンドのパフォーマンスを一大エンターテイメントに昇華させた音楽集団をご存知でしょうか?

ほぼ毎年、日本各地で公演が行われており、これまで累計観客動員数が125万人以上という驚異的な集客力を誇る彼らのコンサートは、まさに「魅せる音楽集団」というキャッチコピーに相応しい世界レベルのエンターテイメントです。一度行ってみたいと思いつつ、なかなか行くことが出来ずにいましたが、幸運にも今年の新潟公演に友人と行くことができました。純粋にコンサート(イベント)としての満足感が満たされたのはもちろん、随所にマーケティングのセオリーが織り込まれ、顧客満足度を高める工夫が仕掛けられた点にも、感心しました。

「blast」が仕掛けた工夫、いくつかあると感じたのですが、ここでは3点ご紹介したいと思います。

 

◎ティーザー効果

コンサートは、映画『ファンタジア』の世界観をベースにしたシーンからスタート。登場人物は、『ファンタジア』では“魔法使いの弟子”役のミッキーマウスを模した絵描きと、映画『ピーターパン』のティンカーベルを模した妖精の2人が登場(私の個人的な解釈ですが)。これから始まるコンサートのストーリーや世界観を感じさせる演出で始まります。

この2人はその後も、各曲の合間に「狂言廻し」的な役で出てきます。どの場面でも必ず絵描きがキャンバスに向かって絵を描く演技をするのですが、コンサートのエンディングまで、どんな絵を描いているのかは客席から見えない角度にキャンバスが置かれており、観客を焦らしながら、そしてそれが適度な緊張感を持つ効果を十分に発揮して、エンディングまで観客の心をひきつけます。

ティーザー効果は、ゲーム機やゲームソフトでよく使われる広告手法で、情報を発売日に向けて少しずつ出していき期待感をあおる効果がありますが、約2時間というコンサートをダレさせずに見せる、という点でこの手法が効果的に発揮されていると感じました。少し見えると、もっと見たくなるという人間の心理を巧く利用した手法で、しっかりと私の心も惹きつけられていました。

 

◎認知的不協和の回避

認知的不協和の理論とは、「消費者は、購入した商品やサービスが、客観的には十分な水準を有したものであっても、不満足を感じる部分が必ずある」という理論です。みなさんも、購入前にいろいろなスペックを調べて車やパソコンを買ったのに、購入後に見つかった欠点について、商品満足度が下がったという経験があると思います。

 

今回のコンサートのチケット代金は約1万円。コンサートの内容から考えると十分価格に見合った内容だと私は感じましたが、決して安いものではありません。

「blast」が仕掛けた「認知的不協和の回避」は、幕間の休憩時間と終演後に出演者がホールロビーにわざわざ出てきて、楽器演奏とパフォーマンスをすることだと感じました。ロビーに観客が座り、一番前に座ってた人からは50センチくらいでは?と思われるほど至近距離でパフォーマンスが繰り広げられます。

それまで舞台の上で、所狭しと動き回りながら楽器を演奏している出演者が、疲れているそぶりを見せるどころか、出演者自身が観客とのコール&レスポンスを楽しむパフォーマンスを至近距離で見せられると、その場にいるお客さんの顧客満足度は間違いなく高くなります。さらに、終演後のパフォーマンスは、これも有名なマーケティングの手法である「ピーク・エンドの法則 (終わりよければ全てよし)」に則っています。

休憩時間になると、観客の多くは迷うことなくロビーへ向かいます。きっとこのような満足度を高めるパフォーマンスに魅せられリピーター化している観客が大勢いるのでしょう。一度行ったら「また行きたい」と思わせることのできるエンターテイメントが完成されていました。

もちろん、それらを経験した私と友人もご機嫌にホールを後にし、その後もコンサートの感想を話題に盛り上がったのは言うまでもありません。

 

◎VRIOフレームワーク

今回のコンサートは「blast the music of Disney」と題され、「ディズニー」という誰でも知っている超強力なコンテンツを上手に使った演出では?と予想していましたが、実際のパフォーマンスや演出を「VRIOフレームワーク」の視点で見ると、「blast」という事業における内部的な強みの源泉がはっきりしてきます。

「VRIOフレームワーク」は、対象となる事業を、4つの視点(V: 価値・Value、R:希少度・ Rarity、I:模倣可能度・Imitability、O:組織編成・Organization)で強みを見つける手法ですが、私が「blast」を「VRIOフレームワーク」の視点で分析した強みは以下になります。

 

V:価値、R:希少度、I:模倣可能度の3つの視点に共通する強みとして、ブロードウェイで定期公演を行っている唯一の音楽集団であり、類似のグループの存在を許さないポジションに到達している、が挙げられます。

O:組織編成の視点では、プレイヤー1人1人が、それぞれ世界的なソロアーティストとしても通用する演奏レベルを持っている集団、になります。

 

また、ディズニー感が満々な事前PRやポスター・チラシなのですが、コンサートの中でディズニーのキャラクターそのものが出てくることは、決してありません。シルエットや体の一部分さえも出てきません。そして、ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」等、ディズニーとは関連性の無い曲を演奏するシーンもあります。

それでも観客を飽きさせずに、エンディングで熱狂的な拍手を持って迎えられるというのは、「VRIO」の全ての視点で強固な強みを持っていて、付加価値としてディズニーの要素を加えているからだと感じました。

 

皆さんが、映画やコンサート、演劇等でワクワク、ドキドキした経験をされた場合、「どうして自分は楽しかった(満足した)のだろう?」と分析してみると、ご自身のビジネスに繋がるヒントが見つかるかもしれません。

もちろん、分析に集中しすぎると楽しむことを忘れてしまいますので、せっかくの楽しい時間ですから、ご自身が楽しむことを最優先にしていただきたいですが…。

何か気づきを得た時、「あ、これか!」という熱い思いを抱くことが出来ると思います。自身の興味のあるエンターテイメントで、ビジネスのヒント探し。おすすめです!

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