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2018.02.15

変わらぬ?獣とヒトの関わり

ものづくり技術コーディネーター 原 利昭

古来より、ヒトと動物の関わりは多様であり、良好な関係を維持しつつ、時に生死をかけた戦いも見られるが、天候異変や住む環境の変化によっても、動物との共存は容易では無い。 数年前に遡るが、動物とヒトの”共生きの世界”を扱った人気TV番組があり、その中の一つに”熊の胆”に目を付けてお金儲けをしようとするウサギの話しがあり、現代のビジネス世界にも十分通ずる話しであった事を思い出す。 現在の高齢世代の多くは、恐らく、”熊の胃”から作られたとする胃腸薬は大変効果があると言われ、当時の状況では、熊の胆は貴重で高価な”創薬材料”として考えられていた事を知っている。しかし、時代と共に製薬技術は高度化し、様々な化学薬品も登場する現在では、”熊”に関する当時の価値観は激変している。 この様なこともあって、先日、”クマ捕殺800頭!悩む秋田”と題する新聞記事を目にし、今更では無く、ヒトとの共存関係が深刻な状況にある事を改めて感じた次第である。 人間との共存を妨げる猪も熊と似ている部分がある。 嘗て小生の指導学生から”実家が有る集落では猪の被害に困って居り、どの様な工夫が考えられるか教えて欲しい”との相談があった。現地に出掛けたところ猪による想像以上の凄まじい被害、特に、地中の野菜等も掘り出されているのを見て驚いた。 勿論、事前に十分話を伺うだけで無く、いろいろ資料を集めて調べたが、地中のモノまで”根こそぎ”の状況を見て唖然とした。猪の身体能力は予想以上に高く、行動は強烈であり、助走を伴わないで柵越えする”垂直跳び”の能力は猿や鹿を超え、1.5m以上の例もある。 更には、太めの頑丈な金網を地面に固定しても難なくくぐり抜ける能力を備え、殺傷しないで対応するには質の高い”知恵と道具”が必要だと直感した。 熊も含めて人里近くに出没する野生動物への対応は容易では無いこと、研究対象とすれば費用と人員がそれなりに必要であり、かなりの困難が予想される事等を改めて意識した。

さて熊の話に戻るが、上記の猪よりは遙かに大型で凶暴性を持ち合わせている熊による被害は、秋田県だけでも2009年以降での死傷者数は20人である。 この様な状況を考慮しつつ住民の要請も受けて捕獲や猟で数を減らしてはいるが、ヒトと熊との”安心の共存環境”構築の足がかりを得るまでには至っていない。 危険で切実な問題に直面する地元住民は、一日も早い解決を望むばかりであるが、一方の保護団体は生息実態に応じて「放獣」を提案し、”クマが里山に来ないよう山奥の自然保護と共に果樹や生ゴミを人の生活圏で放置しない”ことによる住み分けを主張している。 この様に、単刀直入な考え方と中身が見え難くく実現可能性が解らないとする考え方のどちらを選ぶかを躊躇している場合では無い。

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